弥生時代 

公開日 2012年10月04日

いせはらの歴史

弥生時代

農耕のはじまり

坪ノ内・久門寺遺跡出土の炭化したご飯写真

今から約2500年前、中国大陸や朝鮮半島から海を越えて稲作が伝えられました。まず九州北部に到達した新しい技術は、じわじわと全国に広がり、数百年のうちに東北地方にまで伝播(でんぱ)しました。人々は自然の恵みに依存した狩猟、採集の生活から、農耕によって自らが食糧を生産する技術を獲得したのです。

稲作と同時に、鉄や青銅(せいどう)といった金属も伝えられました。金属器は石器よりもはるかに作業能率が良く、土を耕したり、木を切り倒したり、あるいは武器として使うことで、人々の生活を急激に発展させました。さらに、階級制といった社会制度もこのときにもたらされたと考えられます。これらの新しい文化の波が伝えられたおよそ2500年前頃から、古墳が造られるまでの750年間を弥生時代と言います。

弥生時代の開始年代については、近年の分析により紀元前1000年(今から約3000年前)にまでさかのぼるという学説が発表されています。教科書などは未だ書き換えられていませんが、今後はより古く位置付けられるかもしれません。

上の写真は、焼けて炭化したごはん。坪ノ内・久門寺遺跡で出土した土器の中に入っていました。

弥生集落と戦い

石田・細谷遺跡の環濠写真

市内では弥生時代前期の遺跡は見つかっていません。最も古い弥生時代の遺物は高森・赤坂遺跡で出土した土器で、弥生時代中期前半のものです。その後、中期後半になると、愛甲石田駅南の峯(みね)遺跡や高森の宮ノ越(みやのこし)遺跡、串橋(くしはし)の宮ノ根(みやのね)遺跡で村の周りを深い溝で囲った環壕集落(かんごうしゅうらく)が見つかっています。

環濠は戦いから村を守る防御施設といわれ、本格的な水田耕作の浸透により、村の間に争いごとが生じていたことを示しています。村どうしにも、そして村の内部にも、持つものと持たざるものの格差が生まれ、人々の間には階級的な差異ができ始めました。特に西日本では矢じりが刺さったり、刃物の傷がついたりした人骨が発見されており、集団間の激しい戦闘があったことを物語っています。

中国の歴史書『魏志』倭人伝や『後漢書』東夷伝に登場する「倭国」が武力抗争によって乱れていたという記述とも合致します。関東地方ではそれほどの激しい戦いがあった証拠は見つかっていませんが、少なくともこの時代が穏やかで平和な社会だけではなかったことは確かなようです。

石田・細谷遺跡の環濠
敵の侵入を防ぐため、ムラの周囲にめぐらせた大きな溝です。

弥生時代の広域ネットワーク

坪の内・久門寺遺跡出土の甕写真

弥生時代の後期になると、市内での集落分布は、東寄りの石田周辺と西寄りの三ノ宮や善波(ぜんば)周辺に二分されるようになります。

石田には複数の環濠集落が造られ、峯遺跡や細谷(ほそや)遺跡の環濠からは静岡県の浜松市付近の技術で作られた土器が出土しています。一方、大住台の中坂東(なかばんどう)遺跡、上ノ在家(かみのざいけ)遺跡では100軒近い数の住居跡が確認され、三ノ宮の前畑(まえはた)遺跡の住居跡からは静岡県袋井市や掛川市付近の特徴を有した土器が出土しています。こうした土器のあり方や竪穴住居の形態などから、相模川流域の地域には、静岡県の西部地域から人々が集団移住してきたと考えられています。また、坪ノ内の久門寺(くもんじ)遺跡では、丹沢産のグリーンタフ(緑色の凝灰岩=ぎょうかいがん)を利用して首飾りなどに使われる管玉(くだたま)を作っていた工房跡が見つかっています。ここでも、当時の玉造りの本場である北陸地方から専門の玉造り集団が移り住んできたと考えられています。

この頃のいせはら周辺の遺跡では中期までに見られた磨製(ませい)石器がほとんど出土しなくなりますが、それは石器に替わる鉄製工具類が普及したことによると考えられています。当時、関東地方では鉄製品の生産はまだ行われていないため、これらの鉄器も西日本から供給されたものとされています。つまり、弥生時代後期は人々が盛んに移動し、遠隔地とも積極的に交流して、そこに集団間の摩擦をも生む激動の時代だったといえます。そしてこの時代に整備された物流のしくみが、次の古墳の築造(ちくぞう)、古代国家成立への基盤(きばん)となっていきます。

石田・細谷遺跡の環濠から出土した弥生土器
静岡県浜松市付近の影響を強く受けています。
高さは、26センチ2ミリ。

 

管玉写真
 
 
管玉の製品と(左端)と製作途中の未完成品 
管玉の大きさは、左端のものが2センチ1ミリ 。
 
坪ノ内・久門寺遺跡出土の鉢写真

玉造り工房から見つかった北陸系の土器
専門技術をもった人が移り住んだと考えられます。
口径は、14センチ5ミリ 高さは、7センチ2ミリ

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