大山寺縁起 下巻 第2段

公開日 2015年04月13日

時忠夫妻が淀の渡守から鷲にさらわれた子どもの噂を聞く場面

下巻2段

時忠夫妻は、駿河・遠江・三河・尾張・伊勢路・近江路を歩き、淀の渡しに着き、船に乗ったところ、渡守から「何かものを捜しているのですか」と聞かれました。時忠は「私どもは相模国の住人ですが、生後70日にして我が子を鷲にさらわれ、行方がわかりません。生きている間に是非とも会いたくて諸国を遍歴しているのです」と語りました。すると、渡守は「今奈良の都に聖武天皇の仏教の師匠として、東大寺の別当良弁僧正という方がいらっしゃいます。その方は鷲の巣から取り出された人と聞いています。もしかしたら、この方こそまさにそのお子さんではないでしょうか。」と話してくれました。これを聞くやいなや、時忠夫妻は心騒ぎ、胸も押しつぶされるような思いで、急ぎ奈良の都へと向かいました。

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