公開日 2022年02月15日
2.西富岡・向畑遺跡
1 遺跡の概要
- 所在地
伊勢原市西富岡114-13外 - 調査原因
新東名高速道路建設工事に伴う発掘調査 - 調査期間
平成19年4月1日~調査中 - 主な時代
旧石器・縄文・古墳・古代・中世・近世 - 遺跡立地
渋田川左岸の富岡丘陵に挟まれた台地上 - 調査組織
公益財団法人かながわ考古学財団
新東名高速道路のジャンクション建設に伴う西富岡・向畑遺跡の調査は15年目になりました。これまでの調査では、現在の新東名高速道路本線盛土部分とその周囲に、縄文時代中期加曽利E式~後期堀之内式を中心とする集落が展開していることがわかりました。またこの集落の中央には谷が南北に横切っており、その中にトチ・クルミなどの大量の種実片伴う水場遺構が見つかっています。
今回の調査は、この集落の東側に隣接する丘陵裾の調査を実施しました。その結果、集落の時期よりもやや新しい約3,200年前(縄文時代後期末~晩期)の埋没林が発見されました。低湿地ではなく台地上で、かつ炭化していない生の状態の幹・枝・樹皮が残っている縄文時代埋没林の発見はこれまで例がなく、非常に貴重な発見です。樹種はこれまでに26種確認され、シデ・ケヤキ・カエデが優先する落葉広葉樹林とわかりました。また、林床に生えていたササが良好な状態で残っていたほか、カラムシ・ウドなどの種実もみつかりました。植物だけではなく、昆虫も、オオセンチコガネ・アオオサムシ・ダイコクコガネ・ツチカメムシなどの地表を這う虫や、ヤマトタマムシなどの樹上にいる虫、地下に棲むセミの幼虫など多種多様な森林の中に棲む昆虫の遺骸が見つかりました。
これらの埋没林を含む層の下からは、縄文時代後期の遺構が確認され、竪穴住居5軒・埋甕(屋外埋設土器)17基、土壙墓1基が確認されたほか、深鉢の土器片を被せた頭蓋骨が見つかっており、真下から赤彩された耳栓(耳飾り)が出土しました。これらは小穴に納められていたようで、頭蓋骨以外の骨が無く、真下に副葬品を納めた状況から、別の場所で白骨化した遺体を改めて埋葬する再葬墓とみられます。
2 調査地点
3 調査の写真
- 地すべりの痕跡と調査範囲
- 縄文時代埋没林全景
- 枝振りのわかるシデ
- イタヤカエデの樹皮に残るエゾスギゴケ
- 倒木の下の枝や枯れ葉などの状況
- まだ緑色をした葉
- ゴホンダイコクコガネ
- セミ幼虫
- J9~14号埋甕
- 頭蓋骨出土状況と直下から出土した耳栓