「7つの課題」に関する検討結果報告

公開日 2010年04月01日

更新日 2016年05月27日

平成16年6月2日

伊勢原市行財政運営改善推進委員会

本委員会の検討経過

本委員会は、平成15年6月に発足し、以後8回の全体会議を経て12月2日に市長に対する「当面の行財政運営の改善についての提言」(中間提言)を行った。

その後、中間提言で提示した7つの検討課題に即して2つの小委員会を設け、市政の現状の点検と改善方策の在り方についてさらに議論を続けてき た。これは、時間的な制約もあって中間提言では抽象的な表現にとどめざるを得なかった事項もあり、小委員会において、より具体的なレベルまで踏み込んで今 後の在り方を検討する必要があると考えたためである。

これまでそれぞれの小委員会を6回ずつ開き、さらに2回の全体会議で相互に調整して本委員会としての考え方を整理したので、その検討結果を以下のとおり提示する。

市当局においては、(仮称)行財政運営改善推進計画の策定を進めるに当たって、本委員会から出した「7項目の宿題」として受け止めていただき、それぞれの事項に関する市としての考え方を検討し、順次、本委員会に御報告いただくようお願いするものである。

キーワードは「市民が変わる 市役所が変わる」

本委員会では、今日の伊勢原市を取り巻く様々な環境変化を議論の前提として、基礎的自治体である伊勢原市がこれから目指すべき道筋の検討を進め「市民が変わる 市役所が変わる」というキーワードにその方向性を要約した。

イメージ図

これは、市民に対しては市役所依存型の体質からの脱却を求め、市役所に対しては多様な主体とのパートナーシップによるまちづくりへの方向転換と簡素で効率的な執行体制の確立を求めるものである。

中間提言で示した7つの検討課題は「行財政運営の基本的な考え方」として「小さな市役所 大きなサービス」を据え、それを基盤として「市民参加 の推進」「市民利用施設等の整備・管理運営の在り方」「開かれた行政の推進」「行政事務(仕事)の効率化、電子化」を図り、こうした手法を推進するための 「望ましい組織編成」を行い、さらに市の職員を「行政のプロ」として育成していくというように、それぞれ相互に関連するものである。

このような考え方に基づいて、7項目の検討課題に関する本委員会としての現状認識と、それに対する意見を以下に示す。

1 市民参加の推進 ~既に市民協働・パートナーシップの時代に入っている~

[現状と課題]

  • 教育・福祉・医療などの分野では、既に民間部門が低コストでサービスを提供している。少子高齢社会・人口減少時代、地方分権の進展、職員 の大量退職などを展望すると、公的サービスの担い手が多様化している今日、市民ニーズに応えるには、行政が市民や大学、企業等と連携してパートナーシップ のまちづくりを進めることが不可欠になっている。
  • これまでどおり市民が市役所に何でも要求することを続けて市役所が直接それに対応しようとすれば、財政的な制約により、かえって総体とし ての市民サービスの低下を招かざるを得ない。「市民が変わる」ことと「市役所が変わる」ことは表裏一体で、そのどちらもが変わらなければ基礎的自治体であ る伊勢原市の在り方を変えることはできない。
  • 市民の意識は極めて多様で関心のある事柄もそれぞれ異なっている。現実的には、地域活動に無関心な市民も少なくなく、ゴミの持ち出し方な ど、地域内のルールが守られないことがトラブルの元になったり、結果的に行政コストがかさむ要因の一つにもなっている。その反面、自治会活動を始めとする 各種の地域活動や、社会への貢献・奉仕などを目的とする活動に主体的に参加している市民も多く、地域活動に無関心な市民との間には「市民意識」に大きな ギャップがある。
  • 行政は、公平性を確保することが宿命とも言えるが、このことが何事も画一的に市域一律の扱いにしたり、多様な市民ニーズに柔軟に対応する上での妨げになっている傾向があるのではないか。
  • 市民活動を促進するために市民活動保険の制度を設けてその保険料を市が負担している。受益者負担の原則との兼ね合いで本委員会でも議論に なったが、現にこの制度が幅広い市民活動をカバーし、万一の場合に備えた制度として有効に機能していること、さらに新たに受益者負担を導入した場合には膨 大な事務が発生することなど、費用対効果の面からも現行の市負担方式を継続する方が望ましいという方向で合意した。
  • 個別の問題として、市立の学校施設は、体育施設の地域開放で使用されているが、平日の小学校の放課後は、通学する子どものうち、児童コミュニティクラブ事業の利用者以外はほとんど利用できない状況にある。

[委員会の意見]

  • パートナーシップの時代には、市民は、自分たちでできることは自分たちでやり、市民だけではできないことを行政が担うというように、市民 が市役所の仕事を減量化する考え方を持つことが必要である。そうすることにより、市役所は、行政でなければ担うことができない領域に特化してそこを重点的 に担うことができるようになる。
  • 市の仕事の中に市民参加の仕掛けの種が数多くあるはずである。「意見を聞く」ための参加の場というだけではなく「パートナーシップを築く」ための場をつくることを市が積極的に仕掛けるべきである。市職員は、時代が大きく変化していることを十分に認識する必要がある。
  • 伊勢原をより良くしようとする市民の先進的・主体的な取組がある場合には、たとえ公的サービスに地域差が生じてもそれを新しい事業モデルとして認め、側面から支援していくような柔軟性がこれからの行政には必要である。
  • 市から自治会に対して依頼している事項を一度全部洗い出して、市がやるべき事と自治会がやるべき事を再整理するべきである。その上で、パートナーシップの時代における行政と自治会との役割分担と連携の在り方を一緒に考えていくことが必要である。
  • 健康づくり、子育て支援、環境問題、障害者や高齢者の福祉、文化活動、防犯や防災、地域の教育力など、市民と一緒に取り組まなければ実効 性を確保できない行政分野では、行政がボランティアやNPOの立ち上がりを支援し、連携する仕組づくりを進めるべきである。その場合には、行政の縦割りの 取組をそのまま地域に持ち込むのではなく、できるだけ総合化するよう留意する必要がある。また、行政が支援するNPOに対しては、補助金ではなく、商店街 の空き店舗などを活用した活動の場を提供することも検討するべきである。
  • 一般的に日本人は、参加や参画が不得意と言われているので、あまり地域活動に関心を持っていない市民でも気軽に参加できるようなきっかけ づくりがまず必要である。自治会活動への参加、ごみの分別や市民総ぐるみ大掃除、防火・防災、お祭りなどをきっかけとして地域活動に参加することが、市政 への参加・参画の土台になる。
  • 市内に立地する企業や事業所に対して法人市民として地域に貢献するよう働きかける必要がある。伊勢原市では、平日は勤務先の近くで地域に 貢献し、休日は自宅近くの地域に貢献することが当たり前になるような方向を目指すべきである。一例として、担い手不足に悩む消防団活動への法人市民の参加 を検討するよう提案する。また、市職員や市立小中学校の教職員の地域貢献についても、それぞれの地域に立地する事業所のモデルになるよう率先して取り組む べきである。
  • 市民活動保険については現行方式を継続するとともに、今後さらに市民活動を促進するために、この制度のPRに努める必要がある。
  • 放課後の児童、生徒の自由な遊び場として、学校と保護者、地域の連携が整ったところから、学校施設を地域開放することができないか、教育 委員会と学校関係者との率直な意見交換と前向きな検討を望む。学校施設を開放する場合には、自己責任を原則として、市は万一の場合に備えて市民活動保険の 対象とすることなど、市民活動の側面的支援にとどめるべきである。「市役所が変わる」中には「教育委員会が変わる」ことも当然含まれる。

[具体的検討を要する事項]

  • 市民活動拠点の在り方
  • 市民活動サポート体制の整備

2 市民利用施設等の整備・管理運営の在り方 ~制約条件の緩和と受益者負担の原則を~

[現状と課題]

  • 近隣市にあって伊勢原市には無い公共施設については、その整備を望む市民も多いと考えられるが、それぞれの市が同じような施設を造る必要はないのではないか。
  • 市が設置している公共施設の多くは、法律や補助金の制度に即して、利用目的や対象者ごとに設けられているものが多い。利用に当たっての制約条件の中には、当然必要なものもあるが、既存施設を活用する視点から、市民が利用する際の制約をできるだけ緩和する方向が望ましい。
  • 公共施設の開館日や利用時間帯の設定などの面でさらに改善する余地がある。また施設の管理者が異なることによって、施設の空き状況の確認や予約の窓口が枝分かれして相互につながりが無いという問題もある。
  • 施設の規模や市民の利用実態が類似している施設として、市長部局が管理しているコミュニティセンターと教育委員会管理の社会教育施設であ る地区公民館とがある。コミュニティセンターの管理は地域に委ねられて市職員を配置しない原則であるが、地区公民館には館長と事務担当者が配置されてお り、さらに中央公民館には、公民館全体を所管する組織と職員が配置されている。利用する側にとっては、職員が配置されていた方が楽だが、施設の利用実態か ら見てバランスが欠けているのではないか。
  • 本委員会の議論では、既に市民利用施設の有料化に対する市民の抵抗感は強くはなく、便益を受けるなら応分の負担は当然と考える市民のほうが多いという認識である。いつ、どのような方法で実施するのか、市の判断を示す時期に至っている。
  • 他の検討課題とも共通するが、公共施設の管理運営の在り方の検討についても「市の職員でなければできない仕事なのか」という観点が基本である。
  • 障害福祉センターの公設民営化が行われたが、その過程で公共施設の公設民営化を進める際の課題も明らかになった。市の管理監督責任や市民参画の在り方などについて、実際に利用している市民との開かれた議論を行うことが移行の前提である。
  • 地域の集会などに利用されている施設には、地元の自治会が設置管理している自治会館などのほか、市立の児童館、福祉館、老人憩いの家、開 発行為に伴って市に移管された集会所などがある。児童館などの市立施設は、現実的には自治会館などの地元施設とその利用実態に大きな差が無いものが多く なっている。

[委員会の意見]

  • 新たな公共施設を望む市民ニーズに対しては、広域的な公共施設の相互利用拡大や市内及び近隣市の大学・企業等が有する施設の伊勢原市民へ の開放などにより、結果として市民が利用できる施設を増やす方法も有効な選択肢である。また、施設によってはPFIなどにより民間の経営手法も導入可能と 考えられるので、費用対効果の面から事前に十分な検討を加えることが必要である。
  • 不特定多数が利用する公共施設の在り方は「いつでも 誰でも 何にでも利用できる」ことを基本として、利用日、利用時間帯、利用目的等の制限をできるだけ緩和するべきである。
  • 公共施設の空き状況の確認と利用予約の一元的な管理を可能とするように、ITを活用した電子予約システムの構築を早期に行う必要がある。
  • 利用実態の面から見ると市長部局と教育委員会がそれぞれ管理している公共施設の機能に大きな差がないものもあるので、管理者の枠組み自体を再整理するべきである。必ずしも教育委員会が管理しなくてもいいものがあるのではないか。
  • 「市の職員でなければできない仕事なのか」という観点から点検し、公共施設の管理運営におけるオペレーション部分の業務は、市民の力を最大限に活用しながら、アウトソーシングを進めるべきである。
  • 市民サービスの向上と管理運営の効率化を図る必要性が高い施設については、指定管理者制度の活用を進めるべきである。また、図書館、子ども科学館、市民文化会館、総合運動公園の体育施設など、多くの市民が利用する施設を優先して管理運営面の見直しを進める必要がある。
  • 公民館の運営については、中央公民館が全体を総括し、地区公民館における事業展開を管理・掌握するような方向性を検討するべきである。
  • 公共施設の有料化に当たっては、それぞれの施設の特性に応じてどの程度の負担を求めるべきかを精査し、その水準を設定する必要がある。そ の際、公平性、公益性、施設の一般的利用目的の切迫性、運営効率化の必要性等をチェックする基準を設け、その評価に応じた水準を設定するべきである。
  • 料金徴収の方法についても、例えばプリペイドカードやコイン方式など、できるだけ簡便な方法をとるべきである。また、使用料の減免規定を詳細にすると、事務手続が煩雑になるだけでなく有料化の効果自体が薄れてしまうことに留意するべきである。
  • 公共施設の公設民営化に際しては、最終的な施設の管理監督責任は行政が持ち、そこに市民参画の場を組み込むことを基本的な仕組みとして設 定する必要がある。民営化を進めようとする初期段階から、それぞれの施設を利用する当事者の意見を十分に聞き、相互の意見交換を重ねて、結果として市民 サービスの向上につながる方向を見出すべきである。また、全体的には5年から10年という期間の中で段階的に進めていくためのシナリオが必要となる。
  • 公共施設の管理運営コスト削減とサービスの拡大を同時に進めるために、市職員や教員OBのノウハウやシルバー人材センターの人材を活用するべきである。その受け皿を整えるために、行政がNPOの設立支援を行うことを検討するよう提案する。
  • 児童館、福祉館、老人憩の家、市立集会所など、実態として自治会の集会施設として利用されている公立施設については、基本的に地域移管の方向で全体を整理する必要がある。地域移管のための条件を整理し、それが整った施設から順次移管を進めるべきである。

[具体的検討を要する事項]

  • 公共施設の管理運営の在り方(段階的移行の内容)
  • 公共施設有料化の基準設定
  • 日向地区3施設(ふれあいの森キャンプ場、ふれあい学習センター、御所の入森のコテージ)の今後の在り方
  • 市職員OB、教職員OBのNPO設立に向けた支援方策

3 開かれた行政の推進 ~市政の透明性向上と市民参加~

[現状と課題]

  • 平成15年度に市のホームページがリニューアルされ、よりきめの細かい市政情報の提供と市民との双方向の情報交換機能が充実した。月に2 回発行する「広報いせはら」とともに市民への主要な情報伝達手段になっている。本委員会の中間提言後、新たに「市政出前講座」の制度が創設され、市民に対 して説明責任を果たそうとしている市の姿勢は評価できるが、市民からは、市民が知りたい情報がタイムリーに提供されることを望む声が引き続き出ている。
  • 市の職員が日常的な仕事で果たしている説明責任は極めて重要で、職員の基本姿勢と市民への対応の仕方いかんで、市民の受け止め方が大きく異なってくる。
  • 外見上中断して見える市の事業についても、実際には目に見えない形で着実に進んでいるものがある。こうしたものについて市民に現状や過去の経緯に関する情報が伝わらないことで、市民の誤解を招いたり、不正確な情報に基づいて判断される場合がある。
  • 昨年12月にこれまでの公文書公開条例が情報公開条例に改正され、情報公開制度が充実されている。
  • 伊勢原市では、現在、各種審議会等の会議については非公開が原則になっており、事後的に委員の個人名を伏せて会議録を公開することで市民の求めに応じているが、今日、意志決定過程の一層の透明化を求める市民の意見が強くなっている。
  • 審議会等の委員についても「充て職」により一人で数多くの会議の構成員にならざるを得ない場合や、委員が固定化し、長年同一の職についている場合がある。
  • 「いせはら21プラン」の策定時には、多様な市民参加の機会が設けられた。実施に当たって市民や関係者の理解を得る必要がある行政計画を策定する場合には、市民の意見を集約した方が具体的な取組を起こすときに円滑に進むようになる。

[委員会の意見]

  • 「市民が変わる」ためには、市からの積極的で丁寧な説明が必要である。「広報いせはら」と市のホームページ以外にもできるだけ多様なチャンネルを通じて市民に情報を提供することが必要である。
  • 市の職員の行動がこれまでの経験や慣例に頼りすぎていないか、謙虚に顧みる必要がある。かたくなな姿勢では、市民に対する説明責任を的確に果たすことは難しい。
  • 市民参加の過程で色々な立場の市民から反対意見が出ることは当たり前で、そのことを避けるべきではない。市民とのパートナーシップによる まちづくりには、時間も手間もかかることを前提として、それぞれの立場を尊重しながら十分に話し合い、合意を形成する過程が大切である。こうして得られた 結論に対しては、参加する市民の側にも当然、責任を伴うものになる。
  • 関係者の合意形成に時間を要する事業や、進捗状況が当初計画と異なる事業についても、適宜市民に対して正確な情報を提供することが必要で ある。情報が未成熟の段階ではおのずと限界があるとは考えるが、情報が確定するまで待っていては、いかに正確であっても時機を逸する場合が生じかねない。
  • 開かれた行政を担保する制度として、情報公開、審議会等の会議公開と公募市民の参加を制度として確立するよう提言する。
  • 審議会等の公開に当たっては、会議公開に関する基準を作成し、個人のプライバシーにかかわる場合など、非公開にすべき条件を合わせて明確にする必要がある。
  • 審議会等の委員については、法令等の定めによる場合を除き、重複して委員になる会議数の上限を設ける必要があると考える。また、任期の上限を設けるべきかどうか、合わせて検討する必要がある。
  • 審議会等への公募市民の参加については、パートナーシップの基盤として、制度の確立前に実施可能なものは先行的に実施するべきである。
  • 市民生活にかかわる行政計画の立案に当たっては、策定過程の初期段階から当事者である市民に説明し、市民参加による策定を基本とするべきである。

具体的検討を要する事項

  • 的確な説明責任の遂行に求められる事項
  • 会議公開基準、委員選出等の考え方
  • 開かれた市政の具体的推進方策

4 望ましい組織編成 ~顧客重視の組織編成と市政のマネジメント機能~

[現状と課題]

  • 市の行政組織や外郭団体(土地開発公社、事業公社、みどりのまち振興財団)は、右肩上がりの経済や人口が増えていくことを前提としてこれまで設けられてき た。これから先の時代を展望すると、様々な面でサイズが小さくなる(ダウンサイジング)という流れがその前提となる。
  • 民間企業ではターゲットとなる顧客ごとに仕事や組織を組み立てるのが普通だが、自治体の組織は、法制度に即して編成される「縦割組織」に なっている。仕事を進める単位である「課」ごとに目に見えない壁があり、横の連絡や窓口が相互につながらないことがいわば当たり前になっている。
  • 自治体の組織は、仕事の大半を占めるルーティン・ワークを円滑に処理するために設けられている。仕事を処理するには効率的かも知れないが、新しい課題に果敢に挑戦するという発想が育ちにくい。
  • 市長の考え方が担当者に十分伝わっているか疑問がある。また、そのギャップをどのように埋めているのか、一般の市民にはよく分からない。
  • 市役所を訪れる市民は、一般的にその頻度は高くはない。窓口アンケートの結果では、現在、大きな問題は生じていないといえるが、市の仕事や手続に不慣れな人が多いということが組織の在り方を考える際の前提となる。

[委員会の意見]

  • 民間企業の戦略企画本部に相当する一元的なマネジメント機能を行政組織に位置づける必要があるのではないか。自治体を「経営する」場合に は、市長のトップ・マネジメントを支えるこうした機能が不可欠になる。ルーティン・ワークを中心とするこれまでの行政組織にいかに位置づけていくか、これ までとは異なる発想が求められる。
  • トップの考えを市の組織に浸透させるには、抽象的な理念ではなく、具体的な行動のレベルで、目に見える形で伝えることが肝心であり、管理職がその役割を的確に果たすことが必要である。
  • 行政組織及び職員定数をコスト面から検討する場合には、(1)行政組織の中で職員数が多いところ、(2)「公」がやらなくてもいいサービスは何かという2つの視点から考えて、長期的に取り組む必要がある。
  • 市民が使いやすい行政組織にすることが基本であり「総合化」の視点がポイントの1つである。例えば「みどり」「子ども」「お年寄り」などのテーマ、対象に応じた窓口機能や組織編成の在り方を検討するべきである。
  • 市民が市役所を訪れる頻度は高くないので、経験豊富な職員がフロアで市民の行先案内をしたり、気軽に相談に応じるような仕組みの導入を検討するべきである。
  • NPO等との連携を図る際にも市の担当組織が多岐にわたると非効率で責任の所在も不明確になるので極力一元化する。なお、この場合における行政の役割は、NPO等の活動を側面的に支援することである。
  • 市民からの相談に対する窓口機能を充実するために、ITを積極的に活用するべきである。相談内容とその対応策をデータベース化し、それを 共有することにより、1カ所の窓口で受け付けることができる相談内容の幅を拡大することが求められる。その際、市民のプライバシーには最大限配慮しなけれ ばならない。
  • 市の外郭団体(土地開発公社、事業公社、みどりのまち振興財団)については、本格的少子高齢社会・人口減少時代の到来を目前に控え、その 役割を根本的に見直すべきであり、団体の存続、廃止に関する政策的判断が求められる。その際、不動産関連事業の有無、不動産の保有状況、団体固有の事業の 有無など、それぞれが置かれている条件が異なるので、それらを分けて考えることが必要である。
  • 外郭団体を存続させる場合には、市の関連業務を所管する組織との役割分担を抜本的に見直し、事業のオペレーション部分は全て団体に委ね、市の組織は政策立案を中心とする機能に特化し、トータル・コストを縮減していく必要がある。

[具体的検討を要する事項]

  • 今後の組織、職制、権限配分の在り方
  • 顧客主義に基づく組織、窓口の在り方
  • 業務執行方法の具体的改善方策
  • 外郭団体の今後の在り方

5 行財政運営の基本的な考え方 ~小さな市役所 大きなサービス~

[現状と課題]

  • 我が国では地方自治の仕組みとして概括授権方式が採用されていることから、これまで自治体が担う領域は、拡大を続けてきた。経済成長が続 いて税収が増え、財源が確保できた時代には、多様化する市民ニーズに柔軟に対応していくことが可能であったが、今日の行財政環境は、当時とは一変してい る。
  • 国が主導する構造改革は「国から地方へ」と「官から民へ」をキーワードとして進められており、これまで自治体や公共的団体が担うことが当然とされてきた分野においても民間の参入を可能とするよう様々な制度改正が行われている。
  • 地方分権の進展に伴い、市民生活に身近な行政課題には基礎的自治体が対応する方向で権限や財源の移譲が進みつつあるが、近年、市の財政構造の弾力性が急速に低下しており、新たな課題に柔軟に対応していくことが困難になっている。
  • 市と市内の各種団体との関係については、長年の経緯があって今日の形になっているものと考えるが、行政の守備範囲を見直す中で、こうした団体との連携と役割分担の在り方、市からの補助金支出の内容についても整理が必要な状況にある。
  • 一般的に官公庁が発注するものは民間に比べて割高といわれており、そのことが行政コストがかさむ一因になっている。
  • 中間提言においても「重要な課題に十分に対応できる余力を生み出すための仕事減らし」の必要性を指摘した。市が現に実施している膨大な施策・事業の中で、公務員でなければできない仕事は何かということが明確にならないと「仕事減らし」は進まない。
  • 高齢化に伴う納税義務者の減少などにより、市の歳入確保の見通しは極めて厳しいが、税や料金等の納付窓口の拡大など、徴収率を向上させる余地がある。また、滞納者と納税者との公平性の問題が生じている。
  • 市の長期債務には、地方財政法に基づいて、下水道事業を含む社会資本整備の際に発行した市債(5条債)や、景気対策で国が実施した減税措 置に伴う減税補てん債、地方交付税原資の不足を補うために特例として認められる臨時財政対策債などの起債に伴う長期債務として約450億円(元金)ある。 このほかにも土地開発公社が公共用地の先行取得を行う際に借入先の金融機関に対して行う債務保証、事業公社による代替施行方式で整備した学校施設等の未償 還債務などがあり、その債務の返済は、大きな課題である。

[委員会の意見]

  • 本委員会における議論を集約すると、その基本方向は、多様な主体とのパートナーシップにより「小さな市役所 大きなサービス」を目指すべきということである。
  • 市が支出している補助金については、政策に関わるもの、公益性が強いもの、団体の在り方に関わるものなど、質的に異なるものがあるが、ゼロベースの視点から全てを見直しの対象として、今後の方向性を明確にしていくべきである。
  • 本委員会の議論では、補助金交付基準の方向性として、民間でできることは民間に委ねるという原則にたち、(1)廃止するもの、(2)市の 直轄事業に変更するもの、(3)継続するものに区分し、継続するものは、(1)政策目標、(2)透明性、(3)公平性・公正性、(4)効率性・効果性が明 確なものに限り、なおかつ原則として時限を設けるべきであるということで合意した。また極めて零細な補助金については、その補助効果を確認の上、継続すべ き明確な理由があるものを除いて廃止するべきである。
  • 市の契約、入札については、他の自治体における事例等を踏まえて設計価格の引き下げや契約方法の見直しに取り組む必要がある。
  • 長期的に相手先が固定されている契約については、その内容を精査し、競争原理が働くように見直すべきである。また、市が発注する消耗品等については、一般に販売されている規格品であることを原則とするべきである。
  • 談合等の問題を排除するため、契約に関わる事務手続きを一層透明化するとともに、契約、入札に関わる上記のような課題を十分に検討した上で電子入札の導入を図る必要がある。
  • 「重要な課題に十分に対応できる余力を生み出すための仕事減らし」の前提として、一般行政職が担当している仕事について、公務員でなけれ ばできないことは何か、公務員がやる必要がないものは何かという視点から整理し、将来にわたって市の職員が直接担うべき仕事の範囲について市民の合意を得 ることが必要である。
  • 既に民間で同様のサービスが提供されている保育所、ごみ収集、給食調理等の業務については、現に従事している市の職員がいることを前提として、長期的観点に立ってコスト削減方策、アウトソーシングの可能性等、その方向性を明らかにする必要がある。
  • アウトソーシングによるコスト削減効果を得るには、適正な競争原理が働くことが前提となる。また移行段階において無用な混乱が生じ、市政の停滞を招くことがないよう、一定の時間をかけて円滑に移行できるよう措置することが極めて重要である。
  • 市税・使用料等の納付窓口としてコンビニエンスストアを活用することなどにより、市民の利便性と徴収率の向上を図るべきである。また、滞納整理については、他自治体における取組事例等を参考にして、新たな手法の導入について検討を要する。
  • 現在の極めて厳しい行財政状況の中で国県補助の活用、臨時財政対策債を含む市債の発行、債務負担行為の設定など、許容される手法を最大限 に駆使し苦心して予算を編成しているものと理解しているが、長期債務の削減に向けた取組方針を明示し、毎年度の予算編成過程で着実に具体化していくことが 必要である。

[具体的検討を要する事項]

  • 公共工事発注手続の透明化
  • 業務のアウトソーシングの基準設定
  • 税、使用料等の徴収率の向上策
  • 長期債務縮減方策
  • 補助金の見直し、補助基準の設定

6 行政事務(仕事)の効率化、電子化 ~市民ニーズの正確な把握が仕事の出発点~

[現状と課題]

  • 「行政の守備範囲」が必ずしも明確でなく、本来市民や地域が担うべき事柄まで市の仕事としている部分があるのではないか。また、市が制度を創設した時点で は必要性が高かったものでも、その後社会的機能が整い、現在はその必要性が薄れているものもあると考える。仕事の効率化の前提として、こうした観点からの 整理が必要である。
  • 行政には、公正・公平な市民サービスを提供するという宿命があるが、市の職員がそれを免罪符にして、前例の無い新しいことをやりたがらない傾向に陥っていないか再点検を要する。
  • 多くの行政サービスが平日の勤務時間内に提供される仕組みになっているが、民間の雇用形態の多様化に伴い市民ニーズがどう変化しているのか、それぞれの担当が常に把握していなければならない。
  • 行政では、課題を解決するために予算を獲得し、それを事業計画どおりに完全に執行することが最善であるいう考え方が強いと思うが、重要なのは予算の執行率ではなく、その成果である。
  • 市の事務事業経費を積算する場合、一般的には職員の人件費を含まずに計算される仕組みになっており、それぞれの事務事業の実施にかける手間・コストに対して得られる成果がどれくらいなのかというコスト意識が希薄になりがちである。
  • 県市町村電子自治体共同運営協議会を中心として、電子申請や施設予約、電子入札システムの共同開発が進んでおり、伊勢原市もこれに参加して同一歩調で取り組んでいる。
  • 庁内LANの構築や職員へのパソコン配置が進んでいるが、その効果を十分に活用できていないのではないか。自治体でもネットワーク化されたパソコンを使って仕事を進めることが当然の時代である。
  • 高齢化が進むと情報化、機械化に対応できない市民も増える。市としてこうした面への配慮も欠くことができない。
  • 市に対する各種の申請手続やそれに添付する資料などについて、簡素化できる余地があるのではないか。
  • 自治体によっては、窓口業務を中心として土曜日や日曜日に開庁するところが出てきている。伊勢原市では、これまで証明類の自動交付機の設置や郵送による受付などの方法でこれらのニーズに応えてきているが、コストをかけずにサービスを拡大することができないか検討を要する。
  • 地方公務員の勤務や雇用形態を弾力化する方向で制度の見直しが進められている。市の仕事の効率化やコスト削減を進める上で、こうした制度改正の動向に十分留意しなければならない。

[委員会の意見]

  • 市が現に実施している事務事業について、本来、行政が行うべきか否かという視点から再点検し、その結果に応じて実施主体の見直しや事業継続の必要性を判断 するべきである。また既に社会的に機能が整った制度については、廃止する方向を基本とするべきである。なお、これらの見直しに当たっては、市民の合意形成 に十分に時間をかける必要がある。
  • 行政サービスは、その対象となる市民ニーズを正確に把握することが出発点である。ニーズに応じて自動化・機械化することでサービスを向上 できる場合には、コンビニエンスストアや郵便局など、市民の身近な場所への機器の設置を検討するべきである。また、対人的な相談業務等は、実施曜日・時間 帯などに関するニーズを分析し、必要に応じて見直す必要がある。市の職員は、行政サービスの対象となる市民を「顧客」としてとらえ、公的な役職についてい ない一般市民の声も分け隔て無く受け止めるべきである。
  • 事務事業を実施することによって得られる成果を重視し、求める成果と同様な結果が得られるなら、予算執行率が低下しても、より低コストの 方法を選択するような柔軟な執行方法への転換を図るべきである。民間とは異なり行政は利益を上げる必要はないが、同じ成果が上がるなら費用は安い方がいい という行政のコスト意識は今後さらに必要になる。
  • 仕事の効率化、電子化の効果は、省力化にとどまらない。情報システムの構築を背景として、職員一人ひとりが対応できる仕事の範囲を広げ、市民本位の窓口、行政組織を編成するところまで活用し、市役所におけるワンストップ・サービスを目指すべきである。
  • 仕事の電子化に伴って、より迅速な対応を市民が求めるようになるので、行政組織の下位のセクションに責任と権限を移譲して意志決定に要する時間を短縮することが必要である。
  • 仕事の効率化によって得られる成果の一部を高齢社会における対人サービスのきめ細かさや、優しさに結びつけていくことが必要である。ハイテクとハイタッチの両立を目指して市役所の窓口をクイックコーナーとスローコーナーに再編することも検討する必要がある。
  • 県市町村電子自治体共同運営協議会における電子自治体の構築に向けた動きに合わせて、市の内部において申請等の手続を全て洗い出し、手続の統合、簡素化、廃止、機械化等の方向性を明確にしていく必要がある。
  • 庁内LANを活用し、現在の紙を媒体とする庁内の情報交換の仕組みを根本的に改めるとともに、文書や人事などの内部管理事務を徹底的に合理化する必要がある。
  • 今後、行政窓口や市民利用施設の利用日、利用時間帯の拡大を進めていくべきである。ただし、その際には、職員の勤務制度を柔軟に運用してシフト勤務や多様な雇用形態を導入することなどにより、サービス拡大に伴うコスト増を招かないような工夫が必要である。

[具体的検討を要する事項]

  • 行政の守備範囲
  • 申請手続等の点検、改善方策
  • コスト増が生じない行政サービス充実の具体策

7 行政のプロの育成 ~職員は「志」の高い行政のプロに~

[現状と課題]

  • 平成19年度末から職員の大量定年退職が始まるが、現在、年齢の高い職員の比重が大きくなり年齢別の職員構成に歪みが生じている。将来を見通して組織や職員の職と権限配分のバランスの在り方等を根本的に見直すことが必要になっている。
  • 人口増加に伴って組織が拡大していた時代には、長く市役所に勤めていれば、ある程度横並び式に一定のポストにつくことができたが、様々な 面でダウンサイジングが避けられない時代を迎え、地方公務員の立場が保障されていることに安住するような姿勢で仕事をすることは、これから先の伊勢原市の 職員としては許されない。
  • これまで市の一般行政職員は、一定のサイクルで様々な部署を経験し、時間をかけてゼネラリストとして養成されてきた。このため、市の人材育成は、特定の仕事について職員の専門性を高めていくような仕組みになっていない。
  • 今日、民間企業では即戦力を確保するために中途採用が広く行われている。市の職員のプロ化を進める過程では、これまでの採用、人材育成方法の見直しも必要になってくる。
  • これまでの行政には、行政マネジメント、政策立案、市民とのネゴシエイションなどの「プロ」が不在ではなかったか。さらに法律、人権、環境、税、福祉、事務改善、消防・防災、公共施設の設計等の分野でも職員のプロ化が求められる。
  • 現在のところ、伊勢原市には公式な人事評価制度が確立していない。これから先、行政職員のプロ化は必須であり、職員の能力、意欲、仕事の 成果を処遇面に的確に反映させるには、人事評価制度の早期確立が不可欠である。また、評価制度の導入の際には、評価する立場の職員の適性を高めておくこと が必要になる。
  • 行政のプロに求められるのは、専門知識や技術は当然のこととして、プロとしての意識、仕事に対する気持ち・思いのほうが大切である。
  • 経常経費で最も大きいのが人件費である。民間のリストラが進んだことにより、一般的に、同一職種で公務員のほうが2割程度割高だといわれている。経常経費を削減するためには、人件費にどう歯止めをかけるのかということが重要なポイントになる。

[委員会の意見]

  • 行政のプロとして不可欠な資質は「志」の高さである。間もなく始まる職員の大量定年退職時代の後は、少数精鋭の行政のプロが自治体経営に 当たる時代になる。これから先の過渡期とその後の時代の担い手となる若い世代の職員がこのことを肝に銘じてくれるよう、本委員会として強く望むところであ る。
  • 組織と一体としてとらえるべき職員の職と権限配分に関する本委員会の基本的な考え方は、機動性の確保とフラット化である。
  • 行政のプロを育成する前提として、市が現に実施している仕事について、今後も市の職員が行政のプロとして直接担当しなければならないものを峻別することが必要である。
  • 行政のプロが直接担当しなくてもいい仕事については、その性質に応じてボランティア、シルバー人材センター、NPO、民間企業など多様な担い手に委ね、市民サービスの質を落とさずにコストを削減していくべきである。
  • 職員の能力開発と人材育成について、行政のプロを育成するという観点から、これまでの定期人事異動方式を大胆に転換するべきである。伊勢 原市の規模では、採用時点から職を専門・細分化する方式を広く導入することは困難と考えるが、一般行政職として採用後、ジョブ・ローテーション期間で職員 の適性を見極め、特定分野のプロとして育成していく長期的な取組が必要である。
  • 行政のプロを育成するためには、明確な基準に基づく人事評価制度や、職員の処遇の在り方を含むトータルの仕組みを確立する必要がある。ま た、人事評価制度の導入に当たっては、直属の上司による評価だけではなく、複眼的な評価を組み込むことで制度の客観性と信頼性を確保するべきである。
  • 市当局が真剣に行財政運営を改善するなら、人件費に歯止めをかけることを避けて通ることはできない。職員の大量退職の始まりは、見方を変 えれば、こうした改善の千載一遇の機会でもある。当面、定年退職に伴う欠員は補充せずに、長期的人事政策のもとで新規採用を抑制していくという意志を明確 にすることが必要である。

[具体的検討を要する事項]

  • 行政のプロの育成方策と人事管理システム
  • 新たな職員研修テーマ、手法の在り方

中間提言の7項目に即した検討結果は、以上のとおりである。今後の庁内的な検討により方向性が明らかになったものから順次、本委員会との意見交 換を行った上で(仮称)行財政運営改善推進計画案の策定を進められるよう望むとともに、計画案の全体像が明らかになった時点で、本委員会としての最終的な 意見を提示していきたいと考える。

最後に、本委員会における議論の過程では「市民が変わる 市役所が変わる」こととともに「市議会、議員も変わる」こと、具体的には、議員の役割及び定数、報酬などについても検討を求める意見が大勢を占めたことを申し添える。

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